MUKU-DATA  根曲がり杉 化粧タイコ梁 下端の仕上げ


お客様と建築家、現場監督とのやりとりの中で
化粧タイコ梁の仕上げについて少し不安があると、電話で話している中で
建築部の長野から相談され
お客様の要望されているイメージ写真を見せてもらった。
凄く繊細で微妙なところの話をされている事がわかったので、
これは写真添付のメールだけではそのニュアンスは伝わらないと思うから
手加工する大工さんに直接話して相談した方がいいと判断して
急遽、長野とプレカット工場の手加工を行う大工さんの元へ足を運ぶ。

職人さんに写真を見ていただきながらイメージを伝えるのは、
簡単なようでなかなか難しい。
経験上、何度も失敗しているし、それは伝える側の伝え方がいつも悪いんだと
都度反省はしてきた。
(技術のない自分にとっては、技術を持っている職人に対しては常にリスペクトしている。だから言い方、伝え方、微妙で繊細な加工については
十二分に理解していただく必要があるし、図面や写真を投げて
あとはヨロシクでは作る方だって困るだろう。
職人は誰しも、最大限ベストな状態の加工して喜んでいただきたく
仕事に向き合っている人たちが殆どなんだから・・)

大工さんは私の材木人生にとっての教師の一人でもあるし、
ある程度、大工さんの気持ちは分かっているほうだと思っているので
長野と二人でその辺のニュアンスを丁寧に説明するも、、
いまいち冴えない心配そうな顔だったので
長さのカットできる部分をその場で実際に削ってもらった。

そうそう、OKOK、ここはこの程度で大丈夫、
このラインは直角で、、
この甘皮は少し位なら残してもいい。
根曲がりのここの凸凹ラインを設計士さんもお客さんも気に入っているようだから
ここの部分は削らなくてこのままで行きましょう。
てな具合で・・・ (自分ができないくせに嫌なヤツだよね、大工さんスミマセン)

昔はタイコの化粧梁は多くあって、弊社の下小屋で大工さんはいつも刻みを行っていて、電気鉋でタイコ梁を削る姿は目にしていたが
このような電動斫り機っていうのは見たことがなかった。
ここら辺の大工さんはこの斫り機を持っている人はいなかったかと思う。

斫り機はある程度の重さがあるので肩に紐をかけて(草刈り機みたいな感じで)
手前に引きながら微妙な力加減で削っていく。
あんまり簡単に大工さんが削る姿を見て、
自分もやってみたくなり、道具を借りてやってみる。
イカン、削り過ぎて凹みが大きくなり過ぎる。
大工さんに聞くと、繊細にやらなきゃいけないらしく
腕を2回ポンポンと叩き、ここの違いとドヤ顔されたが・・・
そりゃ、そうだ。
長野さんもやってみぃと、建築部長野にもやってもらうが、
間違いなく私よりは上手かったので、少し悔しい。
詳細な仕上げを伝えると共に、電動斫り機を実際に使わせてもらうという
貴重な体験もさせていただいた。
実際に少しでも自らの手を動かすことで
今度は化粧梁の見え方も少し違った目で見る事ができるだろう。
そして大工さんや職人さんに対しても伝え方は、より正確になっていく事だろう。
なんせ、現場で実際に作っているのは我々ではなく
それぞれに技術をもった職人さんたちなんだから。。





以上、上記の写真は大工さん
本当に腕の良い大工さんでプレカットできない手加工の部分は
何度か相談にのっていただきながら仕上げてきた。




赤い丸で囲った部分が、私・・・💦
重力がかかり過ぎて凹みが大き過ぎる。
お客様のイメージはこれではない。。。



上記2枚は建築部の長野
ワシより上手い・・・  くく、、、  



緑部分:大工さん、青:長野さん、赤:ワシ・・・・  



プレカットが普及した今でも部分的には大工技術が必要な箇所は多くある。
特に木の家に関しては木には当然癖もあるし、個体差もある。
そして何よりも大工技術により完成時の見え方は微妙に違ってくる。

この家、どこか分からないけど何か良いんだよねぇ~  ってのは
実はその差は大工技術によるところが多い事を知っている。
そこにはお客さんに喜んでいただきたいっていう職人の魂が宿っている事が多い。




追記:12/23 2023 実際に取り付けられた根曲がりの鞘落し梁
   壁を貼り空間の中で、どういった見え方になるのか楽しみです。
   金子勉建築設計事務所 様 曲がり梁を使って特徴ある空間を実現する